大判例

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東京地方裁判所 平成12年(ワ)18448号 判決

原告 東洋熱工業株式会社

右代表者代表取締役 野末尚

右訴訟代理人弁護士 安藤良一

右同 塩川哲穂

右同 古澤昌彦

右同 早野進子

被告 株式会社第一勧業銀行

右代表者代表取締役 杉田力之

右訴訟代理人弁護士 関口保太郎

右同 冨永敏文

右同 古館清吾

右同 吉田淳一

右同 脇田眞憲

主文

一  東京地方裁判所が同裁判所平成一二年(リ)第三八八一号配当手続事件につき、平成一二年八月三〇日作成した配当表のうち、原告への配当額三五五七万三〇六四円とあるのを四一四一万五五六九円とし、被告への配当額二四六〇万八九八九円とあるのを一八七六万六四八四円にそれぞれ変更する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は各自の負担とする。

理由

第一請求

東京地方裁判所が同裁判所平成一二年(リ)第三八八一号配当手続事件につき、平成一二年八月三〇日作成した配当表のうち、原告への配当額三五五七万三〇六四円とあるのを四五〇六万八六六七円とし、被告への配当額二四六〇万八九八九円とあるのを一五一一万三三八六円にそれぞれ変更する。

第二事案の概要

1  事案の要旨

本件の基本的事実関係には争いはない。争点は、債務名義にかかる請求権に支払済みまでの遅延損害金がある場合に、債権者が申立日までの遅延損害金に限定して債権差押命令を申立て、その旨の債権差押命令が発せられた後に、配当手続段階において、債権差押命令申立日から配当期日までの遅延損害金を計算書により補充して配当表作成時に債権額に含めることができるかどうかである。

2  前提となる事実

(一)  原告は、訴外サンウッド株式会社(以下「訴外会社」という。)を被告とする貸金請求訴訟(東京地方裁判所平成七年(ワ)第五六八一号事件)を提起し、この訴訟において、訴外会社は元金一億九四九八万四九六四円及びこれに対する平成六年一〇月一四日から支払済みまで年三〇パーセントの割合による金員の支払を求める原告の請求を認諾した。

原告は右認諾にかかる認諾調書を債務名義として、平成七年一一月三〇日、別紙差押債権目録記載の債権を差押債権とする債権差押命令の申立をなし(東京地方裁判所平成七年(ル)第七七八五号事件)、右差押命令は同年一二月一一日第三債務者に送達された。

この差押命令の申立及び差押命令の請求債権には前記元本のほか、平成六年一〇月一四日から申立日である平成七年一一月三〇日までの確定遅延損害金を請求する旨記載されていた。

(二)  被告は、訴外会社を被告とする貸金請求訴訟(平成七年(ワ)第一九五二九号事件)を提起し、元金一億〇五八五万七九八九円及びうち金三三〇六万三六五二円に対する平成三年七月九日から、うち金六九三三万四〇八四円に対する平成二年一〇月一〇日から各支払済みまで、年一四パーセントの割合による金員の支払を認める判決が平成七年一一月二一日に言い渡され、この判決は確定した。

被告は、右確定判決を債務名義とし、元本一億〇二三九万七七三六円と債権差押申立日までの確定遅延損害金七八二七万八三九八円を請求債権として別紙債権目録記載の債権を差押債権とする債権差押命令の申立をなし(東京地方裁判所平成八年(ル)第一八七四号事件)、右差押命令は平成八年三月二六日第三債務者に送達された。

(三)  第三債務者は、差押が競合したため、平成一二年五月一日、別紙差押債権目録記載の債権のうち平成一二年四月三〇日支払期日分として、六〇一七万一六四九円を山形地方法務局米沢支局に供託し、同月九日、東京地方裁判所に対し供託書正本を添付して事情届を提出し、平成一二年(リ)第三八八一号事件として配当手続が開始し、配当期日は平成一二年八月三〇日とされた。

(四)  原告は、平成一二年八月二九日、平成六年一〇月一四日から配当期日までの遅延損害金を計算した「再債権計算書」と題する債権計算書を東京地方裁判所に提出した。

(五)  平成一二年八月三〇日、配当期日において、東京地方裁判所は遅延損害金を差押命令申立日までに限定した差押命令の請求債権に基づき配当表を作成したのに対し、出頭した原告代理人が異議の申し出をし、同年九月五日、原告は被告に対し本件配当異議訴訟を提起した。

3  当事者の主張

(一)  原告の主張

法は計算書による付帯請求の請求の補充を当然の前提として認めている(民事執行規則一四五条、六〇条)。

差押命令申立日までで付帯請求の終期を定める運用は、後から差押をしたものを有利に扱うものであり、債権者間の均衡を失するもので妥当でない。

(二)  被告の主張

法は不動産執行の規定をそのままあてはめることを予想してはいない。また、不動産執行の場合には、強制競売の申立時において、付帯請求の終期を申立日までに限定せずに認めている。しかし、本件も含め債権執行の場合には付帯請求の終期を申立日までと限った以上は、その範囲内で取立権原を有するに過ぎず、また、配当手続になった場合にも第三債務者の供託により配当遮断効が生じ短期に配当に至ることを予定しているから、債権執行の場合には、法は計算書による補充を前提にしているとは認められない。

なお、被告は東京地方裁判所執行部の実務にしたがって遅延損害金を配当期日までのとする計算書を提出しなかったが、原告に対して補充を認める場合には、被告についても同様に扱われるべきである。

第三判断

一  債権執行は、たまたま第三債務者になった者の協力のもとに成り立つ制度であるから、法解釈上も第三債務者に過度の負担とならないように配慮した上で債権者間の公平、再執行申立をしなければならない債権者の負担等を考慮するのが制度趣旨に合致し合理的である。

二  原告は債権差押命令申立において、その請求債権を元本と申立日までの遅延損害金に限定している。そのような限定を付さず、履行期未到来の遅延損害金を請求債権に掲げることも可能であり、そのような措置を自ら採らなかった以上、計算書による補充は認められないという立場もあり得る。確かに民事執行法三〇条一項の解釈としても付帯請求については期限未到来でも請求債権に含めることができると解すべきであり、不動産執行については実務上そのように運用されていることは当裁判所において顕著である。しかしながら、不動産執行の場合と異なり、債権執行において、期限未到来の遅延損害金が請求債権に掲げられていると、多くの場合には第三債務者は自ら利息・損害金を計算しなければならず、その負担は過度に重く、ひいては第三債務者の協力を基本とする債権執行制度自体が危殆に瀕する結果を招かないとも限らない。

したがって、不動産執行と異なり、申立時においては、付帯請求の終期を申立日までとする運用にも十分な合理性があると認められる。

三  そうすると、次に申立日以降配当期日までの付帯請求を計算書によって補充することができるかどうかであるが、前記の実務を容認しつつ、計算書によることも認められないとすれば、申立日以降配当期日までの付帯請求については、新たな債権差押命令によることになるが、これでは<1>差押申立日から配当期日まで長期にわたる場合には多額の利息・損害金が生じることが多く、債権者間に配当するにあたってもその利率、経過期間の違いは配当額に大きな影響を与えるとともに、改めて差押命令を申し立てるのでは回収の実があがらないおそれも大きいこと、<2>あとで差押命令申立をした者の方が付帯請求の終期が遅くなることは不合理であることは否定できないこと、という問題があろう。他方、<3>計算書による付帯請求の補充を認めたとしても、配当段階では既に第三債務者によって供託された金額の分配が問題になるのであって、第三債務者の負担が増えるわけではない。

したがって、申立時においてその後の付帯請求については放棄したと認められるような場合を除き、計算書により申立後の付帯請求を補充することが認められるべきである。

四  以上からすれば、本件原告の主張は理由があり、配当の前提となる原告の債権額に差押命令申立日以降配当期日までの遅延損害金を含めることとする。

ところで、被告は計算書による補充が認められない東京地方裁判所の運用を前提に計算書を提出しなかったと認められる。計算書による補充が認められるとの運用が確立しているのであれば、計算書を提出しない以上は補充をしないものとして扱うことになろうが、本件において計算書の提出があった原告にのみ補充を認め、計算書の提出のなかった被告にそれを認めないことはかえって差押債権者間の均衡を失する結果となり、そもそも差押債権者間の均衡も計算書による補充を認めようとする本判決の立場により結果としてより矛盾した事態が生じてしまう。そこで、本件に限っては、本件訴訟中において被告から予備的になされた原告と被告とを同等に扱うべきであるとの主張を認め、配当の前提となる被告の債権額に差押命令申立日以降配当期日までの間の遅延損害金に含めることとする。

右を前提に原告、被告の配当額を計算すれば主文掲記のとおり配当表を変更すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 金子修)

別紙<省略>

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